Character Quest:Asterius:VN:1
Background: 暗転
Background: 新宿駅東南口
Music:
賑わいに満たされて、 地下街は混み合っていた。 |
東京にいる転光生は色も背丈も千差万別で、 まるで波うつ色水のようだ。 |
喧騒は華やかではあるが、 いかんせん流れが速い。 |
ここで買い物を楽しむには、 よほどの慣れと体力が必要だろう。 |
そんな流れに逆らう巨体が1人。 人混みを泳ぎもせずにじっと立っている。 |
Asterius: う、やっぱし地下街は 人が多いな……。 |
Asterius: 人混みは……苦手だ……。 さっさと買い物して、か、帰ろう……。 |
Asterius: 今日は、何を作ろうかな。 あんまり思いつかねえ……。 |
Asterius: だ、誰か、決めてくれる人が…… いれば、いいんだけど。 |
あれ、アステリオス |
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Asterius: あ……Player。 お前も買い物か、奇遇……だな。 |
Asterius: そ、そうだPlayer。 お前……何か食べたいものとかあるか? |
Asterius: あ、いや、違うぞ……! 別に、誘ってるわけじゃ、ねえ。 |
Asterius: えと……一緒に食べたくないわけでも、 ねえけど……。 |
Asterius: その……おれなんかと、 飯食っても……だな。 |
Asterius: あ、えっと……。 でも、おれ、実は料理とか……。 |
SFX:
Music:
Slime: ぷるぷるーーーーっ! |
Asterius: え、えええっ! きゅ、急に、バトルとか卑怯だぞっ! |
構えて、アステリオス! |
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数が多いっ! |
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Asterius: ……っ、しょうがねぇ! Player、おれから、離れるなよっ! |
Asterius: 誰も近づくな! 誰も入って来るな! |
SFX:
Asterius: ――窒巨閉息!! |
SFX:
「距離」が現実を超えて、捻じ曲がっていく。 近くは遠く、さらに遠く。 |
あらゆる干渉を遠ざけ、 アステリオスを世界から切り離すように。 |
Asterius: Playerっ! 手を―――― |
しかし、伸ばした手は届かない。 |
SFX:
Background: 暗転
暴力的に伸びていく距離を前に、 二人は引き離されていく。 |
SFX:
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮
Music:
目が覚めて、 そこに広がる闇を見て。 |
どこまでも続く石造りの壁は光を閉ざし、 暗鬱とした空気が肺から感情を蝕んでいく。 |
生命の気配は無く、ただただ自らの呼吸音だけが 耳朶に反響して孤独を際立たせた。 |
ここには孤独が詰まっているのだと、 肌で感じてしまった。それを知っているからだ。 |
よろりと、誰もいないという重圧から逃げるように 足が勝手に動き出す。 |
SFX:
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮行き止まり
壁を曲がり。 |
SFX:
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮
道を進み。 それでも、目の前には孤独しか見つからない。 |
生者のぬくもりはなく。 死者の冷たさすらもない。 |
あるのはただ、 虚無にも近い孤独のみ。 |
慣れたはずだったのに。 どうしてこんなにも心を締め付けられているのか。 |
どれだけ道を進んでも、 誰もいないのではないか。 |
そんな孤独に心が屈しかけたとき―― |
――『その人』はいた。 |
Asterius: ああっ……Playerっ! よ、よかった、無事だったか……! |
Asterius: 大丈夫かっ……寒くねぇか? 怖かっただろぉ……もう心配ねぇぞ。 |
アステリオスっ! | |
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全然、大丈夫だったよ! |
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(どさくさに紛れて抱き着く) | ||
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Asterius: そうか、良かった……。 お前は強い奴だからなぁ。 |
Asterius: 運が……悪かったな……。 急に、襲われるなんて……。 |
Asterius: ま、まあ……アプリバトルなんてしてるんだ。 こういうこともある、だろう……。 |
Asterius: この迷宮は、おれの「神器」で 作られた、もの……なんだ。 |
Asterius: 急なことだったから…… 説明も、してなくて、ごめんな……。 |
Asterius: ここに逃げればもう安心だ……。 なんたって、おれを隔離するためのもんだからな。 |
Asterius: でも……。な、なんでかわかんねぇけど…… この「神器」が制御できなくなっちまって……。 |
Asterius: ごめんなぁ…… 本当に、おれのせいで……。 |
それならアプリを切れば……? |
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大丈夫、きっと何とかなるよ |
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Asterius: だ、駄目なんだ。 アプリを切ったけれど、元には戻らねえんだ。 |
Asterius: おそらく、だけども…… こ、この地下街が、「閉鎖領域」になってんだ。 |
Asterius: こういう場所じゃ、「アプリ」を切っても 「権能」がもたらした結果は残り続ける……。 |
Asterius: た、多分、夜になって シャッターが下ろされちまったのかもしれねえな……。 |
Asterius: お、おれは迷宮を呼び出す事はできても、 消すことはできねえ。 |
Asterius: だから、ここから出るには…… 自力で出るほかねえんだ。 |
Asterius: い、今までこんなこと、 なかったんだけどなあ……。 |
Asterius: でも……脱出するまでは、 おれが責任もって、面倒見っから……。 |
Asterius: たぶん、一晩もありゃあ脱出できると思う。 だ、だから…… |
Asterius: 頑張ろう、な? |
SFX:
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮
Asterius: お、おかしい……なんで、おれの迷宮で おれが、道を……間違えるんだ……。 |
Asterius: 方向はこっちのはず……なのに……。 |
Asterius: ……すまねぇ。 どうやら迷宮が一刻と構造を変えてるみてぇだ。 |
つまり、出られない……? | |
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あきらめないで、ほかの道を探そう! |
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Asterius: そうだな……方向自体は、合ってるはずだから…… 出口に近づいては、いるはずなんだ……。 |
Background: 秘島の迷宮
Asterius: ん……、何してんだ? そんな剣で迷宮が壊れるわけねぇだろ……。 |
Asterius: ……試しにやってみただけ? そっか、まあ……いろんなことを試すのは悪くねぇ。 |
SFX:
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮
Asterius: こ、こっちも、行き止まり……か。 |
Asterius: また、戻らねぇとな……。 |
なんだか楽しそうだね? |
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元気だね |
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Asterius: そ、そうか……? たしかに……そうかもしれねぇ……。 |
Asterius: ……………。 いや、本当のことを言うとな……。 |
Asterius: おれ……、 今、楽しんでる。 |
Asterius: こんな時に何言ってんだって…… 自分でも思うけど……。 |
Asterius: お、おれ……何でかわかんねえけど、 お前に会えてすげえ嬉しいと思ってる。 |
Asterius: みんなに、あ、会えて…… よかったって……。 |
Asterius: ……あ、れ? |
Asterius: ――「みんな」って誰のことだ? |
Asterius: ……なんか、変なこと言っちまったな。 わ、忘れてくれ……恥ずかしい……。 |
Asterius: ほ、ほら……早く動かねぇと、 ここで夜を明かさなきゃならなくなるぞ……。 |
SFX:
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮
Asterius: もう、だいぶ歩いたな……。 体内時計で、深夜ってところか……。 |
Asterius: ここで寝るしかねぇか……。 安全だけはあるぞ……誰もいねぇし……。 |
お疲れ様 |
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もうくたくたー | |
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Asterius: お、おう……Playerもお疲れ様……。 慣れない道ばかり歩いて疲れただろう。 |
Asterius: あ、あのな…… もうちょっとだけ、近くに行っていいか……? |
そう言って、毛皮に包まれた巨体が 距離を詰める。 |
肩と肩が触れ合っているだけで、 独りではないのだと安心できる。 |
Asterius: さ、寒いと、いけねぇだろ……? だから、その……あの……。 |
Asterius: ……う。 |
Asterius: 本当は……おれが、 近くに行きたかっただけだ。 |
Asterius: お、おれ……迷宮で、誰かと一緒なんて、 考えたこともなかったから……。 |
Asterius: 隣にお前がいると、 なんか、安心する……。 |
(自分もだと頷く) |
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(もっと距離を詰める) | ||
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Asterius: そっか……よかった……。 ……へへ、あったかいなぁ。 |
Asterius: ……あ、そっか。 腹、減ったよな……。 |
Asterius: ここを出たら、 簡単な飯くらい作ってやる……。 |
Asterius: ……ずっと、一人で暮らしてたから。 料理は……そこそこできっぞ。 |
Asterius: だから……明日も、頑張ろうな。 |
毛皮を持つ彼に寄りかかって、 まどろみへと。 |
冷たい迷宮で、ここだけが、 彼のそばだけが。 |
――とても、温かかった。 |
Background: 暗転
Background: 部族の集落
Music:
Asterius: 別れは寂しいけど…… さよならじゃねえぞ、またな、だ! |
(これは、おれ……?) |
Asterius: た、たとえ一度忘れたって、みんな、また会える……。 そう信じて……おれ、待ってるからなあ! |
(「みんな」……「みんな」って……) |
――――誰だ? |
Background: 暗転
SFX:
Background: 秘島の迷宮
Music:
Asterius: ……出口、見えねぇな。 |
Asterius: 起きてから、ずっと歩いてっけど…… まだ先みてぇだ……。 |
Asterius: (昨日の変な夢、何だったんだろうな……) |
アステリオス? |
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Asterius: あ……悪い。 ちょっとだけぼーっとしてた。 |
Asterius: でも、なんで、こんな…… 構造が変わっちまうんだろうな……。 |
Asterius: ま、まるで…… 迷宮が逃がさないって言ってるみてえだ……。 |
Asterius: ……不安にさせるようなこと言ったな。 忘れてくれ。 |
Asterius: た、タウラスマスクって知ってっか。 |
Asterius: あ、あいつの「糸」の「神器」なら この迷宮の「権能」をものともしねえんだけどな。 |
Asterius: こ、この「迷宮」は、あいつの「糸」より下だって、 元の世界で序列が付いちまってるから……。 |
Asterius: 居てくれれば、よかったんだけど……。 |
Asterius: お、Player。 ……つ、次の角を曲がるぞ。 |
角を曲がるとき、道を歩くとき。 アステリオスの腕が、そっと触れる。 |
昨日に比べ、アステリオスとの距離が近くなったのは 気のせいじゃないだろう。 |
目と目が合うと、 どこか照れ臭そうにそらされる。 |
Asterius: あ、その……な。 このまま、帰れなかったら……どうする? |
Asterius: 食料の問題とか……あるけどよ…… おれと、お前の二人っきりでさ……。 |
Asterius: 昨日みたいに、一緒に眠るんだ……。 |
Asterius: へ、変なこと言ったな……。 おれ、昨日からずっと、変なことばっかりだ。 |
Asterius: ……やっぱり、ちょっとだけ 浮かれちまってるのかもな……。 |
気持ちはうれしいけど |
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それでも、帰らなきゃ |
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Asterius: そ、そうだよ……な。 こんなところにずっといたら……気が滅入っちまう。 |
Asterius: せめて、もっと……温かくて、 明るくて、食べ物の心配とかなくて……。 |
Asterius: 楽しいところなら…… お前と、一緒にいられるのかも……。 |
Asterius: でも、お前は……それでも 帰りたいって言うんだろうな……。 |
Asterius: ………。 |
Asterius: あ、れ……? |
Asterius: たしか、そんな状況……前も……。 前も……。 |
Asterius: お前は帰りたいって言って…… そ、そして、おれは……このままがいいって……。 |
Asterius: 今と、同じ、状況で……。 |
Asterius: ――あ。 |
Asterius: ……そ、そうか。 おれ……ああ、これは……。 |
Asterius: ――おれの望んだことだったんだ。 |
Background: 暗転
Background: 秘島の迷宮
Music:
つまり、この迷宮の構造を変えてたのは |
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アステリオス自身ってこと? |
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Asterius: そう、だ……。 本当に申し訳ねぇと思う……。 |
Asterius: あ、あのな……お前は覚えてねえかもしれねえし、 おれも……全部思い出したわけじゃねえけど……。 |
Asterius: おれとお前は、一緒に暮らしてたんだ。 |
Asterius: お前以外にも、誰かいたと思うんだけど…… まだ、はっきりとは思い出せねぇ……。 |
Asterius: でも、お前と一緒に魚を取って、 一緒に寝っ転がって。 |
Asterius: 小さな島で……おれ、すごく幸せだった……。 それくらいは、思い出せたんだ。 |
Asterius: あの島の時と同じで……今が、すごく幸せだから、 お前との時間が、ずっと続けばいいって……思って。 |
Asterius: だから、「神器」がおれの気持ちに応えて…… 出れないように……構造を変えた……。 |
Asterius: 迷宮がおれを支配してたんじゃねぇ。 おれが、迷宮を使ってお前を閉じ込めてたんだっ! |
Asterius: へ、へへ……。 ……ごめんな。 |
Asterius: それに迷惑かけて…… おれみてえなやつ、駄目、だよな……。 |
(そんなことないと、首を横に振る) |
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(否定して、少し距離を詰める) |
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Asterius: ……! |
Asterius: あ……。 ありがとう……。 |
Asterius: へへっ、お前と一緒に過ごせて楽しかったからな、 もう……目的は達成したぞ……。 |
Asterius: そ、れじゃあ…… 脱出……するか……。 |
Asterius: ……どうやって、って顔してるな。 なあに、そんなの簡単、だ……。 |
言うや否や、 アステリオスは背負った斧を振りかぶる。 |
アステリオスほどの剛腕でなければ、 扱いきれないであろう程に巨大な斧が。 |
躊躇もないまま、勢いよく振り下ろされた―― |
Asterius: こ、こうすれば、いいんだあっ! |
SFX:
耳をつんざく破壊音を奏でながら、 堅牢に見えた迷宮の壁はあっけなく穴をあけた。 |
Music:
Asterius: はぁ……はぁ……。 さあ、行くぞ……壁が直る前に……! |
SFX:
アステリオスの大きな手が伸びて、 体が引っ張られていく。 |
SFX:
アステリオスが壁を壊すたびに、 迷宮の壁が再生していく。 |
それは、一緒にいたいという感情の裏返し。 自身ではどうにもできず、焦がれてたまらない感情。 |
SFX:
それを、アステリオス自身が打破して進む。 あの島で学んだ感情を糧に。 |
はっきりとは覚えていなかったが、 たしかにそれは、彼の中で息づいていた。 |
Asterius: おれは、もう気づいたんだ…… こんなところにいるより会いたい人がいるって。 |
Asterius: だから、お前はあの島から帰りたがってたんだ…… 今なら、おれにもわかる……。 |
Asterius: お前と出会い、 初めて自分が「寂しい」とやっと気づけた。 |
Asterius: お前とずっと一緒にいたい……。 でも……でも。おれは……! |
Asterius: みんなにも、 会いたいんだっ! |
Asterius: わ、忘れたままなんて嫌だ……! おれは、思い出さねぇとダメなんだっ! |
SFX:
握った手を離さずに、 アステリオスは片手で壁を打ち壊す。 |
Asterius: また、あの時みてぇにおれを連れ出してくれ! おれを……外にっ! |
Asterius: 今はもうだめなんだ……! ここに一人じゃいられねぇ……! |
Asterius: だって、だって………。 おれは寂しいって、知っちまったんだ! |
Asterius: そんで……そんでなぁ! ここを脱出したら、おれと、お、おれと……。 |
SFX:
Asterius: ――――また、友達になってほしいんだぁ! |
もちろん! |
---|
喜んで! |
---|
Background: 暗転
SFX:
Background: 秘島の迷宮
Background: 秘島の迷宮出口
Music:
Asterius: あ、あれ、 出口じゃねぇか……!? |
Asterius: やった……ようやく…… ようやく、だ……。 |
眼前に光が見える。 世界へと繋がる出口が、光をたたえて待っている。 |
しかし、その時。 |
Music:
Slime: ぷるぷるーーーーっ! |
Asterius: な、なんでこんなところに、 おれ以外の生き物が! |
Asterius: ひょっとして、昨日のやつを 一緒に閉じ込めちまったか? |
Asterius: く、くそ……そんなこと言ってる場合じゃねぇ。 足止めを喰らっちまったら……壁に阻まれちまう! |
Asterius: 分断されたら、 また会うのは大変だぞぉ! |
Asterius: 速攻で、かたをつけるんだ! |
Background: 暗転
Music:
Background: 秘島の迷宮出口
SFX:
Background: 秘島の迷宮行き止まり
最後の1匹を倒した時同じくして、 迷宮の壁が2人の間に割って入ろうとする。 |
Asterius: ――――おりゃぁ! |
SFX:
Background: 秘島の迷宮出口
アステリオスの斧が壁を砕き、 力強く引っ張る。 |
Asterius: もういねぇな……! なら、あとは……出るだけだ。 |
近いはずの出口が、途方もなく遠いように感じる。 それでも、二人は出口に向けて走り出す。 |
しかし、外に出るということは もう二人っきりになれないということ。 |
みんなに会いたいという感情が嘘では決してないが、 この状況に幸せを感じていたのは事実。 |
だから、アステリオスの胸中に、 ほんのわずかな影が差す。 |
SFX:
Background: 秘島の迷宮行き止まり
隠しておいたものに迷宮は機敏に反応して、 壁が、出口を覆い隠そうとする。 |
Asterius: このやろ……っ! |
SFX:
アステリオスが自慢の剛腕をふるっても、 壁は少し削れただけ。 |
伸びていく壁は出口を覆い隠して、 二人を逃がさないと意志を固くしていた。 |
なぜならそれは、アステリオスが持つ孤独の裏返し。 強固で分厚い、外への恐怖。 |
そんなものに対して本人ができることは、 ただ、押しとどめるだけ。隠そうとふたをするだけ。 |
Music:
Asterius: ……お前。 先に行ってくれ。 |
Asterius: おれは……お前を閉じ込めるために こんなことを、してるんだ。 |
Asterius: だから、お前が出れば…… 迷宮もじきにおとなしくなる、と思う。 |
Asterius: 最後まで迷惑かけちまって、ごめんなぁ……。 でも、また、外で会ったら……おれと……。 |
それでも…… |
---|
Asterius: えっ? |
伸ばされた手はしっかりとアステリオスを掴み、 非力ながらもこちらへ手繰り寄せる。 |
巨漢の重量を動かすには至らないそれが、 たしかに、孤独な牡牛の胸に届いた。 |
それでも! |
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君と一緒に脱出したいんだ! |
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Asterius: お前…………。 |
力で引き寄せたわけでは 決して、ない。 |
アステリオスを思いやる心が、 彼を突き動かしたのだ。 |
一緒に、脱出したい |
---|
はやる心に突き動かされて、 アステリオスの足が迷宮の地面を蹴った―――― |
Asterius: ああ、おれも……。 おれも、お前と一緒に……! |
Background: 秘島の迷宮出口
SFX:
Background: Shinjuku West Gate
Music:
Asterius: ……。 なんとか、脱出できたみてぇだな。 |
Asterius: 今回は、迷惑をかけた。 ……ご、ごめんな。 |
Asterius: これで、だいぶ、おれの気持ちにも整理がついたから、 次からは……こんなことがないと、思う……。 |
手、握ったままだね | |
---|---|
|
まだ握っておく? |
---|
Asterius: そうだ、な…… まだ、握ってたい……。 |
Asterius: と……友達……。 |
だからね |
---|
Asterius: ……へへっ。 ともだち、ともだちかぁ……。 |
Asterius: きょ、今日は、ほら…… 大変だったからさ……。 |
Asterius: これから風呂入ったり、 飯くったり……いるだろ? |
Asterius: ……だから。 うち、こねえか……? |
Asterius: ほんとに、うめえんだぞ……料理。 そんで、休んだら……探しに行こう…… |
Asterius: ――――「みんな」を。 |
Background: 暗転
アステリオス キャラクエスト第1話 -END- |