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|text= | |text=かくして宴もおしまい、おあとがよろしいようで、ってな。さァて、店仕舞したら儂も泳ぎにいこうかね。一緒に来るかい、お前様?;ちょりーッス! どうだ、最近の挨拶っぽいか? ナウなヤングの流行りは押さえておかんとなぁ……ん、どこぞの天狗っぽいから気を付けろって?;なんでそんなに他人様の勇気を試すのかって? そりゃァ傾奇者が好きだからに決まってらぁね。誰かの決めた道から外れる勇気……そういうのがたまらないのサ。;「百鬼夜行」っちゅうもんはある意味、日陰に押し込められた妖怪共の憂さ晴らしヨ。昔にゃマッポ撒きつつ単車の群れで……ん、何だいその顔は?;胸張って生きるには、勇気ってモンが必要サ。おどろと乱れたこの世の中に己の足で立っている……それだけで、お前様は十分立派だよ。;あの駆け出し化け狸……いや大泥棒とやら、か。ああいうタマを見てンのは、気分がいいねエ。何かに成ろうって勇気が、たまらなく良いンだ。;あの男を見ていると昔化かした奴を思い出すねェ。ずっとずうッと耐えて忍んで、でも堂々と! この先いい事あって貰いたいと思うよ、ほんとサ。;ほァ、大妖怪に触るたァお前様とんだタマだねェ。さては「どっち」か、たしかめようとしたのかい? おっかねェモンが飛び出てくるかもわからんぜ。;たまのお祭騒ぎ位、日陰者も楽しみたいさ。どっかに押し込めっぱなしじゃ、気も滅入る。この東京でも百鬼夜行と行こうじゃないサ!;おう、健気なるかな、サモナー殿。 今日も一日、元気にいきたいのぉ。 あ、お茶入れてくれんか、お茶。;これがスマホ……ちっこくて壊しそうだなぁ……げ。すまぬ、割れてしもうたわ……!;竜たる姿を見たいと? わしの? でかいぞ? おっきいぞ? つーぶれちゃうぞっ?;いろいろ頑張っておるようだが無茶はいかん。こっちだこっち。隣に座るがよいっ。;いやぁ、賑やかなところは楽しくなるのうっ。昔はずーっと海の底で尻尾すら動かせなんだわ。何故だと? ……我が動いたら津波起こしちゃうし……。;なんと、あの兄者がこの地に……。疑り深く、それでいて惚れやすく面倒臭い性分だがあれで良い兄でな……どれ、少し相手をしてくるか。;なんと、あの引きこもりの我が妹がこの世界に!? 冥界より出てこなかった妹をどうやって……。ううっ、またおにいちゃん磯臭いと怒られるのか……。;むはははははははっ。こそばゆい、こそばゆいぞっ!;遠くの空が白んできたね。やがて旅も幕を閉じる。でも星は見えなくとも、その輝きは失われない。またいつか……きみと一緒に星を見たいと思う。;夜のプールと聞いたけど、想像以上に賑やかだ。光るライトが宙を舞い、皆が笑顔で楽しくはしゃぐ……まるでエメラルドの都だね!;鷲の心臓、白鳥の尾羽から、竪琴の柱の先を結ぶ。それが夏の大三角。天の川はわかるかな、って……あっ、ごめん、近付きすぎてしまったよ。;太陽は昼の、星と月は夜の空から導いてくれる。特に夜は、独りじゃ怖くて震えてしまう僕にはまだ……導く灯りが必要なんだ。;どうしたんだい? 僕みたいに俯いて……あのね、無理して顔を上げなくてもいいと思う。ほら見て、水面にだって星の海は輝いている。;あの人は「踏み外す勇気」を持てと言っていた。不思議な人だ……臆病な僕の何もかもを知るみたい……え、妖怪の大頭領? こ、腰が抜けた…!;あの人、ずっと夜空を見上げていてね? 思い切って、星が好きなんですかと尋ねたら、あれが全部釣り針だったら……って。んんん……?;わわあっ、突然前から抱き着かないでおくれ! 嫌じゃないけどとっさに噛んだら嫌だから……あの、モフりたいなら……正面から、ど、どうぞ!;こういう夏の夜は好きだ。臆病な僕にも星に輝く煉瓦の道がキラキラ光って、ようく見えるよ。;夏の夜明け。華やかな宴も空の向こうに……ってな。でもまあ、夜はまた来るし、星だってまた輝く。気が向いたら、誘ってくれ。俺様もあいつも、な。;臆病者のあいつは、星を見てるのが好きなのさ。もし気が向いたら、誘ってやってくれねえか。その時はもちろん……俺も付き合ってやるけどな!;獅子座……なあ。どうしてお偉がたっていうのは気に入ったら、何もかんもお空に上げちまうのか。別に俺様は……なんでもねえよ、昔の話さ。;どうした、どこぞの臆病者みたいに俯きやがって。暗い夜闇が怖えなら、俺様の方を見てりゃあ星明りの代わりぐらいにゃなるだろう。;益荒男なんて呼び名は、あいつにこそが相応しい。彼方へ旅をしようだなんて、勇気がなきゃあ思わねえ。怖いだけの人食い獅子なんかよりよっぽど、な?;あの大英雄様を前にすると、息が詰まっちまう。つくづく思うぜ、俺様は勇気があるんじゃなくてただ恐れを知らなかっただけだとよ。;へっ、優雅にプールで油断してると思ったか? 隠れてモフろうとするヤツは……んガオォォーッ! …あり? うおっ待て! 首は弱えんだ……にゃあん!;周囲が喧しい? そりゃ大量の象とダンサーがひしめき踊ってりゃ当然……ってどうなってんだ! っ、手がかかるのはあの臆病者だけじゃねえな!?;あいつの憧れる姿、なりたい姿、それが今の俺様。でもいつか……あいつが未来に辿り着いたら。その時の俺様は、いったい何になるんだろうな?;夏の夜の夢は煙のように消えていく。そして、煙る太陽はまた空へ……フフッ。さあ、踊ろうか。この一夜を、忘れられない夜にするために。;すまない、少々手配に時間がかかってしまってね。暑中の移動は酷と思い、私なりの送迎を用意したよ。さあ、どうぞ隣の席へ。象に乗るのは初めて?;私の出資したテーマパークは楽しんでいるかい? 個人的にはもう少し……そうだ、パレードをしよう。え、象とダンサー? ……さすが、わかっているね。;幼き頃から、私は様々な学術武芸を修めてきたが、その時のワザがビーチバレーで活かせようとは。ハッ! ……すまない。蹴ったボールが破裂した。;ワノクニに伝わる妖怪の大頭領、だが、あの者も、「虚ろ」を知った目をしている……本来ならまみえる間柄ではないが、意外と気は合ったりするのかな。;ヨルムンガンド……彼はたしかにそう名乗ったのだね? いや、まとう空気に微かな覚えがあっただけさ。千に一度の夜くらい、そんな邂逅もあって良い……。;おっと。急に私の手を握ってどうしたんだい? 煙のように消え失せないかと不安になった? 私はここにいるさ。そう、この夜が明けるまでは……。;贅の限りを尽くすのは世の儚さを忘れるため。煙のように掴み難い幸せを夢みて……なんてね。さあ行こう。今夜はそう……燥ぎたい気分なのさ。;退屈そうに見える? ハハッ、私もそう思う。でもね。夏の熱気に浮かされて尚、胸に抱いたこの空しい心も……君の笑顔で救われてるんだ。;そろそろ祭も終わり。なんやかんや楽しかったわい。どうじゃこの後、2人でバーベキューでもするか? 山の幸も海の幸もてんこ盛りでな、がっはっはっ。;ご、ゴージャスなデートスポットじゃあ、緊張するのう。もっとイカした装いにした方が良かったじゃろうか。何? 飾らんともオイは格好良えと……お、おう、そうじゃろそうじゃろ、がっはっはっ!;はは、見てみい! 海みてえにでっけえプール! 山の蛍みてえにキラキラ輝くあのライト!まるで竜宮城みてえじゃあ……。;見つけたっ…っと、月が水面に映えちょるだけか。光っとるもん見ると、ついクセで飛びついちまうライフワークになっちまったな……どうしたもんか。;この街でそんなにまでして見つけたい物があるなら、オイがずっといつまでも、お前と一緒に探してやるわい。……ま、まあとりあえず気分転換に泳ぎに行くかっ?;ぐおおおぉっ! 海の男で、あの豪快ぶり! オイの兄貴とは違う、とわかっちゃいても、ついつい張り合っちまうのう?;星を見るのが好きな奴とも話したんじゃが……天の川の両岸に、離れ離れの恋人たちがいるって話があってなあ……お前はオイから離れたりしちゃいかんぞ、いいなっ?;んぉっ! なんじゃい急にくっつきおって……。このヤマサチヒコの兄貴ぶりに甘えとうなったか? そうかそうかっ! こっちこい、ほれほれぇっ!;オイは兄貴みてえに独り立ちはしてねえかもだが、オイには助け合える、お前みたいなヤツが居る……。がっはははっ! 海から出てきて以来、世界がますます広く見えるようじゃわいっ。;この宴も終わるときが来たのだな。俺は、この気持ちを表す術を未だ知らんが……またいつかこうやって、御前と仕事を、夏の盛りを楽しめれば、そう強く……願っている。;御前よ、休憩時間と言われたのだが本当か? 24時間働かなくてよいのか……何、取るのは義務!? ……この東京は、驚きに満ちているな。;ナイトプールか。命が危険に晒される夜を、綺麗だと思えるのは初めてだ……あえて夜闇の中で水浴びを楽しむなど命知らずだと思っていたぞ。;御前よ。もしや気分が優れぬのではないか? 夏場は体を冷やし易い、羽織る物を準備した。俺が編んだブランケット……役立ったならば嬉しく思う。;己の意志で、仕事を選び、対価を得るなど……奴隷の俺では思いもよらなかっただろう。悪くない……悪くない……! これが勤労の喜びなのだな、御前よ。;あの獅子、今は空の向こうを目指しているのだと聞く。……俺は天上世界に夢想を抱けたことなどなかったな。ああ……やけに遠く、眩しく見える……。;あの巨漢からしきりに益荒男などとずっと称えられ、持ち上げられているのだが……。ずっと誰かの奴隷であった俺には過ぎた評価と思う。;……どうした? お客様たる御前よ。ああ、さぞや熱かろう、俺の働きぶりの証だ。御前に喜んでもらえたら、嬉しい。;楽しそうに見える? ……そうだな、誰かを楽しませるための仕事が、俺には存外向いていたのかもしれん。糸巻きも編み物も……思えばそんな代物だったよ。 | ||
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