Character Quest:Andvari:VN:1

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Background: 暗転

Background: 池袋地下格闘場通路

Music:

――池袋バーサーカーズギルド。 ある日の、地下格闘場にて――

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お、いたいた、いやがったPlayer! よっしゃ、これで人員は揃ったな!

地下格闘場に訪れるいなや、 アンドヴァリは両手を広げて歓迎した。

バティム、ノーマッド、ポルックスと言う、 バーサーカーズの面々も一緒にいた。

え……?


いったい何の騒ぎ?


半裸がこんなに集まって……!
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俺はしっかり服着てるだろ! 半裸チームじゃねえから!


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いやぁ、大変な時に来ちまったな、Playerよォ。 ま、アンドヴァリに噛まれた思って諦めな!

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俺をガルムみてぇに言うんじゃねえよッ!?

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と、まあ、そんなわけだからよ! 頼りにしてっぜ、Player。

まかせて!


話が見えません。


もちろん対価は頂きます。


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おうおう! いい返事じゃねぇか! 利用しがい……頼りがいがあるぜ! ガチで!

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ま、それはそうとアンドヴァリさ。 ちゃんと説明した方が良いんじゃない?

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少しばかりデンジャラスちゃんな場所じゃん? 何かあって、管理不行届とかツライっしょ?

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あー、確かにな。 最近は医療費も高騰してっからなぁ。

Background: 暗転

Music:

Background: 池袋地下格闘場通路

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この世界が様々な異界とくっついてる話。 そこんとこの説明は省くぞ。

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んで、この池袋にゃ、クロードうちのボスが作った 地下通路が色んな所にありやがってな――

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つい昨日のことだ。 池袋地下通路に、異界のダンジョンが重なった・・・・・・・・・・・・・

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ま、そんなことは今日びの東京じゃ珍しいことじゃねぇ。 新宿の地下街に異界の地下迷宮ラビリンスとか――

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――港区に異界の雪山が現れたりしてるしな。

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まあ、細かい話はおいといて、今重要なのは そのダンジョンの価値だ、そう、コインだ!

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ダンジョンっつーのは、言ってしまえば時価だ。 時間が経てば経つほど、荒らされて価値は下がる。

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だからその前に俺たちがダンジョンに入り、 金目の物を先にごっそり頂いちまうっつー寸法だ!

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で、その為の護衛っていうのか? それがオレたちってことだ。

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なんつっても、行き先は未知のダンジョン。 何が潜んでるのもわかんねえしな!

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オレは兄者を探してるからな。 もしかしたら、一緒に召喚されてるかもしれねぇし。

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いなかったらいなかったで。 まだ見ぬ強敵とか、ワクワクしちまうしな! ガチで!

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おっと、旦那の口調が移っちまった。 いけねぇ、いけねぇ。

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……連れが多いと儲けが減っちまうが、 呪い対象の細分化も必要だしなっ……。

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何か言ったか、アンドヴァリの旦那。

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いんや? なんも? まったく? ガチで何も言ってねえよ? ガチで。

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(気付いてないのは、ポルックスちゃんだけってね。  ま、面白いからオレっちは黙ってるけど!)

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そんなわけだ! お前さんの活躍、期待してっからよ!

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あ、これ契約書な。サインでいいから。 交通費は自腹。ボーナスありのガチホワイトだぜ!

がんばります!


嫌な予感しかしない。
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心配性だな、Playerは! みんなに任せときゃ、魔物なんざ雑魚よ。ガチで。


他にも誰か来ちゃうの?
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あー、いろいろと当たったんだがな……。

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マガンは儲けに興味ねえし、イクトシはガキだし、 ケンゴとガルムとタウラスは学校で忙しいっつーし。

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クロードとスノウは面倒くせえことになりそうだし、 モリタカは捕まらねえし、ホロケウカムイは山。


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さすがバーサーカーズ期待の新星! がっぽり儲けさせてくれや!

Background: 暗転

Music:

Background: 池袋地下通路

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へーっ、池袋駅の地下が、 マジで洞くつみたいになってやがる。

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サンシャインに繋がる地下通路から、 枝分かれするように洞くつが伸びてやがんな。

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あっちの方、清掃工場とかなんかだっけ? うっひぃ~、ゴミだらけは勘弁ちゃんよ。

洞窟入口の前で、 皆が思い思いを口にするなか――

アンドヴァリは、ひときわ大きく輝く、 左薬指の指輪に向かって、言葉を発す。

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役割ロールは――。 権能ルールは――。

ボソボソと小さく紡がれた言葉により、 アンドヴァリの指輪が、淡い黄金色の光を放つ。

神器の発動……?


アンタ神器持ってたの?!


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シーーーーーーーーッ……! 見てたのかよおいっ、目ざといヤツだな……。

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ん。

そう言ってアンドヴァリは、 Playerに向けて手を出した。

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拝観料。盗み見たから肖像権侵害。 さあ、きっちり払ってもらうぜ! ガチでな!

Background: 暗転

Music:

Background: 池袋地下通路行き止まり

意気揚々とダンジョンへと突入する一向。 道中は、特筆することもなく平和だった。

それも、そのはず。 何故ならポルックスが「神器」を発動しているからだ。

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この灯りが灯る所、全ての災いは自ら避けて通るってね。 ……便利だろう、Playerよォ?

ポルックス、ありがとう!


チート過ぎる……!


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はっはァ、褒めてくれて嬉しいぜッ! こいつは元々、オレと兄者の「神器」だからよっ。

行く先々で入手する宝をアンドヴァリが回収。 ただそれだけの、退屈な繰り返し。

やがて一行は、行き止まりにぶち当たった。

行き止まりの奥にあるのは、 宝箱がただひとつ。

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ありゃ、こんなもんかよ今回! シケてんなおい!

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オレっちに似合うマジックアイテムもなし。 うーん、こんな日もあったりしちゃうかな。

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俺はコインさえもらえれば良い。 そろそろ事務所の更新が近いんでな。

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んじゃ、そろそろはじめっか! オレの神器、切っちゃうぜ?

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バッカ! まだ早えよ! こんな袋小路で切っちまったら――

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よいしょーーーーーっっと。 ほい、終わりっとォ!

SFX:

アンドヴァリの制止をまったく聞かず。 ポルックスは、神器の偽装展開を勝手に終了した。

Music:

SFX:

Slime: プルップルルーーーーーーーッ!

ポルックスの神器、その加護が消えた途端、 大量のスライムたちが出現する。

――帰りの通路をすっぽり塞ぐ形で。

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だーーーーっから言っただろ! こんな逃げ場のないとこで、どうすんだよガチで!

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いやぁーっ、今回は闘いがまったくねえから、 闘いたくて体がウズウズしてんだよ!

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だーいじょうぶだって、アンドヴァリの旦那。 こんな雑魚の群れ、俺一人でだって倒せるって。

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――破ッ!!

SFX:

襲い掛かってきたスライムに、 ポルックスは一瞥もせずに迎撃する。

――かに見えた。

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ありゃ?

突き出したポルックスの拳が、 あっさりとスライムの液状に飲み込まれる。

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ありゃぁぁぁぁぁぁっ!?

ごぽっ。

そのまま体ごと引っ張られ、ポルックスは 大量のスライムに飲み込まれた。

……………。


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……………。

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……………。

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……………。

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あんのガチ脳筋拳闘士が! スライム相手に素手とか馬鹿じゃねぇの!?

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ありゃりゃ……! こいつぁヤバヤバちゃんだったりする?

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――燃やすか。

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まだあの宝を回収してねえんだから、 あまり大げさなことすんなよ!

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注意して倒してくしかないかねっ。 アンドヴァリもしっかりよろしくちゃん!

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ったく……。俺はお前ら戦闘狂と違って、 非力な一般ドワーフなんだよ。ガチで。

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来るぞっ!

Slime: プルップルルーーーーーーーンッ!

Background: 暗転

Music:

Background: 池袋地下通路行き止まり

Slime: プルップルルーーーーーーーンッ!

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どっせぇぇぇぇぇぇいっ!

SFX:

自身の身の丈ほどもあるアンドヴァリの大斧が、 大量のスライムたちを、盛大に横薙ぐ。

だが、元々液状であるスライムには効果が薄く、 微かに動きを止める程度で、ダメージが皆無なのは明白。

それでも攻撃の手を緩めてはならない。 手を止めれば、問答無用でスライムが襲い掛かってくる。

そうなると、袋小路で逃げ場のない通路は スライムで満たされる。そして――

良くて窒息、最悪、 スライムにゆっくり熔解されてしまうからだ。

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ったく……キリがねぇな! ポルックスがバカじゃなけりゃ……!

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だけど、どうするよアンドヴァリ! このままじゃジリ貧だぜ!?

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……このままでは、状況は好転しない。 もう俺が吹き飛ばすか?

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ダメだ! まだあの宝箱を回収してねぇぞ!

そう言って、アンドヴァリは 奥にある宝箱に向かって走っていく。

宝箱を開け、中身を確認し。 そして――事は起こった。

――大地が揺れた。

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あ、ヤベ。 この宝の価値は……!

突如、黄金色に輝く自分の神器を見て、 アンドヴァリは顔面蒼白になった。

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何か起こるぞ! 身構えろ! ガチで!

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何かって何ッ!? アンドヴァリ、いったい……!

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地震だと!? こんな時に!?

SFX:

洞窟が……崩れる!?


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げ。

揺れの中、アンドヴァリの上にある巨大な岩が、 その頭上に落ちようとしていた。

さすがに頑丈なアンドヴァリでも、 あの巨大な岩に潰されれば、死んでしまうだろう。

SFX:

そう判断した瞬間―― Playerは走り出していた。

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――Player?! おま――

Background: 暗転

不安定な地盤の上を、必死に走り。 そして――

SFX:

――剣が煌めいた。

SFX:

………。

……………。

…………………。

――どれくらいの時間が経っただろうか。

Playerの意識が次第に覚醒し、 アンドヴァリの独り言が聞こえてくる。

Music:

Background: 池袋地下通路崩壊

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あーっ、たくっ……。 まさか最後であんなお宝に出会うなんてな……。

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予想外の出費はかさんじまったが、 ま、コイツを売り払えば……ヘヘヘッ!

宝?


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どぅわ! ビックリしたッ! 起きてんなら起きてるって言えよ!

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全員無事だぜ。生き埋めは回避できた。 ダンジョンが倒壊しちまっただけだ。ガチでな。

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アイツらは出口を探しに行ってる。 俺とお前はお留守番だ。

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あ、動くんじゃねぇぞ? 気絶してたから寝かせとけって言われてっからな。

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バティムの薬草は天下一品だ。 すぐに回復すんだろ。

みんなが危険なんじゃ?


治療費を請求します。


二人っきりだね。


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んー……。大丈夫だろ。 もうあんな規模の「呪い」は起きねぇよ、ガチで。

頭をボリボリかきながら、 アンドヴァリはバツの悪そうな顔をする。

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もう「報い」は受けちまったから、安全だろ。 あーっ、全部ポルックスのせいだ畜生。

やっぱり元凶は!


あなたが犯人です!


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……………。

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あーっ、そうだよ! 俺様の神器のせいだよ! ガチでな!

吐き捨てるように言うと、観念したのか、 左手の薬指の指輪を見せてきた。

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あんま公開してねえんだから、 他のヤツらにゃ言うんじゃねぇぞ?

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コイツが俺様の神器。 「黄金の指輪」だ。

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ちょいと特殊な神器でな。 コイツ自体には攻撃性はまったくねえ。

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効果はシンプルだ。 持ち主に「金運」を呼び寄せる。

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その代償として、呼び寄せた「金運」の分だけ、 持ち主とその周囲パーティに、不幸の「呪い」をかけちまう。

呪い?


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分かりやすく言やあ、「報復」だ。 価値があればあるほど、「呪い」は強くなる。

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そこで重要なのは、ポルックスの「神器」だな。

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アイツの「聖エルモの火」は、 すべての災いを回避する聖なる火だ。

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もちろん黄金の指輪の「呪い」も回避できる。 ま、回避するだけで消えはしねえんだがよ。

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「呪い」はきちんと受けた時点でカウントされるんだ。 つまり、回避し続けても永遠に減らねえんだな、これが。

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だが、人数が多ければ「呪い」の力も分散するし、 バティムたちで対処しちまう予定だったんだが……。

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あのバカ拳闘士が勝手に権能ルールを切っちまいやがって スライムが出てきてあのザマだ!

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そして最後の大岩は……コイツが原因だ。 あの宝箱から入手したんだがな。

そう言ってアンドヴァリは、 どこからかひとつのアクセサリーを取り出した。

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このお宝は見た目は普通だが、 ものすごい価値があるモンだ

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これを呼び寄せたのは、間違いなく俺の「神器」。 俺が入手した瞬間、代償の「呪い」が発動。

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丁度皆から離れちまったから、 「呪い」が分散せず、俺一人に発動しちまった。

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このアクセは、俺の命より価値があるって 指輪は判断したんだな。

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ま、何にせよこいつを売り払えばコイン大量ゲット! いやぁ、恩に着るぜPlayer!

そんなにお金が大事?


死ぬところだったんだよ!?
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ま、結果良ければすべて良しってな!


ドワーフは強欲。
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ドワーフは強欲ねぇ。

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面白ぇモンだよな、ガチで。 事実は小説より奇なりって言うんだっけか?

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この世界の絵空事でしかない ドワーフと言う種族が、俺らの世界じゃ普通に存在する。

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しかも強欲、鍛冶が得意、魔法や法術は不得手。 見た目のイメージすら同じと来たもんだ。

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エルフ族、竜族、オウガ族、オーク族…… そこらへんも、俺がいた世界と共通だな。

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エルフどもは、池袋ここいらじゃあんまみねえけどよ。 暴力沙汰が嫌いな奴らだし、東や南の方にはいるのかもな。


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何、わかりきったこと言うんだよ。 当り前じゃねぇか。

Background: 池袋地下通路崩壊

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コインに執着する理由?

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ま、理由としてはいろいろあるが、 ドワーフ族の本能っつーの?

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俺様もこの世界に召喚された時は、 前後左右、何もわからなかったからなぁ。

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だから、いろいろと調べたぜ。 幸い、文献には困らねぇ世界だったからな。

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世界が変われば常識は変わる。 国っつーもんはそーゆーもんだ。

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その国を作るのは、経済、流通、物資、文化。 そして根底にあるもんは何だと思う。

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コインだよコインッ! コインは天下の回り物ってな!

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強欲だとか、遠巻きに言うヤツらはいるけどな。 言わせときゃあいいのよ、あんなの。

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ソイツらが、俺に何かをしてくれるか? 財を失えば、コインを恵んでくれるってのか?

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バカ言ってんじゃねぇよ! ガチで! 俺を助けるのは、俺が集めた財だけだ!

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憶えときな。コインは裏切らねぇんだ。 これは世界が変わっても共通だ。ガチでな。

寂しくない?


Music:

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……お前さんは、アイツに似てるな。 おせっかいなとことか、ホントそっくりだ。

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アイツって誰かって? 勇者様だよ、勇者様。

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……そんな目で見んじゃねえよ。 俺らの世界じゃ、魔王っつーのがいてな。

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この東京にゃ、魔王らしくない魔王や、 悪魔らしくない悪魔もいっから、ピンと来ねぇか。

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ま、要は世界を破滅させるのが目的の魔王。 悪と言っても差支えのないヤツらだ。

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俺のいたドワーフの国も脅威に晒されていてな。 何度も魔王軍の侵攻があったんだよな、ガチで。

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その時に現れたのが、「勇者様」御一向ってな。

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ほっっっっっんと、お人好しの野郎でな。 いやーっ、とことん利用させてもらったぜ! ガチで!

……………。


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……………。

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お前にそんな顔されちまうと、 なーんか調子狂っちまうな。ガチで。

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ほら、お前にだけ特別報酬だ。 あと俺様の「神器」の口止め料な。

アンドヴァリは自ら装備している指輪の一つを外し、 Playerに放り投げた。

指輪?


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俺手製の指輪だ。 ただの普通の指輪だけどよ。

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ホントなら魔力を込めるとかしてえが、 魔法とかは管轄外なんでな。ガチで。

魔法使えないの?


腹にもよらず器用だね。

腹は関係ねえだろ、腹は! ガチで!


さっきから「ガチで」って何?
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ああ、こいつぁうちの一族の口癖でな。 俺もガキん頃から使ってたぜ? ガチでな。


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生憎、ドワーフは魔法がつかえねぇんだよ。 こればっかりは、生まれついた種族の問題だな。

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エルフとの混血だったら、もしかしたら…… 魔法を使うハーフドワーフがいる可能性はあるけどよ。

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ま、そんな物好きはエルフはそうそういねぇわな。

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コインの価値もわからねぇエルフ族が、 ドワーフ族と契りを結ぶなんざ、あるわけがねえ。

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もしそんな混血なんぞいたら、 腹踊りでも何でもしてやるよ、ガチでな!

Background: 暗転

Background: 池袋地下通路崩壊

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さってと――行くとすっか。 そろそろ、出口も見つかっただろうしな。

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サボってる思われちまうのもなんだし。 立てるだろ? ホラ。

あ、ありがとう。


二人きりだといいドワーフ?


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なに笑ってんだよ……!

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あ、勘違いしてんじゃねぇぞ!? 俺様は今回、間違ったことしてねぇからな!

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てめぇまでいなくなったら、 俺一人が呪いひっかぶるじゃねぇかっ。

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いいか! 次からも一緒に来い! 指輪はその「呪い」だかんな! ガチで!

Playerを起き上がらせると、 アンドヴァリはパッと手を離し。

丸い体と巨大な石斧を揺らしながら、 ドスドスと、勝手に歩きだす。

そして――誰にも聞こえない程の 小さな呟き。

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……助けてくれて、あんがとな。

そのうしろをPlayerが続き。 二人は帰路へ着いたのだった。

Background: 暗転

アンドヴァリ キャラクエスト第1話                       -END-